就労継続支援A型事業所の“今”を、デニムから語る
就労継続支援A型事業所は、障害のある人が雇用契約を結び、安定した環境の中で働くことができる仕組みだ。大阪にも多くのA型事業所が存在し、それぞれが独自の「ものづくり」や「業務スタイル」を模索している。
就労継続支援A型事業所のMirrime(ミライム)では、最近“デニムの再構築”という新しい試みに挑戦している。漂白剤を使い、1本のデニムの色を落とす——そんなストリートの感覚を取り入れたものづくりだ。
この作業は、利用者さん1人が主導して行った。
単純な作業のように見えるが、抜く色の濃淡や配置には、センスとタイミングが問われる。完成したデニムは、どこか都会的で、ルールに縛られない自由さがある。それが今の就労支援A型の現場を象徴しているようにも感じられた。
新たに生まれ変わったデニム。漂白剤によるムラ感がデザインの一部になっている。
このデニムは、利用者さんが試行錯誤を重ねて完成させた1本。市販品にはない独特のトーンがストリートに馴染む仕上がりになっている。漂白の工程は、色落ちの進行を自分の目で見極めながら進める必要があるため、集中力と経験が求められる。
全体の色の抜け具合をチェックする瞬間。利用者さんは、蛍光灯の下で光の反射を確認しながら微調整をしていた。白くなりすぎると古着感が強く出すぎるし、残しすぎるとリメイクの意図が薄れる。その“中間”を探る作業は、ファッションブランドのディレクションにも通じる。
一定の距離から全体を見て、ムラのバランスを確認する。
作業台の上に広げたデニムを前に、利用者さんは光の角度を変えながら観察していた。漂白剤の反応時間は素材によって微妙に異なるため、視覚的な判断が重要になる。ファッションと化学の境界を行き来するような時間だ。
手の動きはゆっくりと、でも確実に。漂白が進むにつれ、インディゴの濃淡が浮かび上がってくる。利用者さんは、手袋越しに布の感触を確かめながら、デニムの表情を“読む”ように進めていく。
ポケットや縫い目部分の細かなムラをチェック。
細部まで手を抜かない姿勢が、リメイクデニムの完成度を左右する。縫い目の中に残る深いブルーが、全体のリズムを作り出している。この作業は集中力と根気の連続だ。
仕上げに入ると、利用者さんは再び全体を見直す。 部分的な色残りをどう扱うか、どの程度まで“抜く”か。その判断の一つひとつが、最終的なデザインにつながっていく。
自分の手で仕上げた1本を見つめる表情に、確かな手応えがにじむ。
この瞬間、デニムは“作業物”から“作品”へと変わる。利用者さんは、完成した色味と質感を確かめながら、次に挑戦したいアイデアを口にしていた。
3本目のデニムが完成したとき、作業場には静かな達成感が漂った。それぞれのデニムに異なる表情があり、どれもストリートでそのまま履ける仕上がり。リメイクというより“再構築”に近い。
すべて色抜きの加減を変えた3本。個性ではなく、狙いの違いとしてデザインされた。
並べてみると、漂白の強弱や生地の反応の差がひと目でわかる。どれも同じ工程で作られたが、結果はまったく異なる。そこに“ものづくり”の奥深さがある。
利用者さんの声
デニムの色を落とすのは、思っていたよりスムーズにできました。自分の感覚で仕上げられるところが楽しかった。街で履いても違和感のないものを目指しました。
利用者さんの言葉には、“仕事”としての責任感と“クリエイティブ”の意識が共存している。阪の就労継続支援A型事業所が、単なる作業場ではなく、自己表現の場へと進化していることを感じさせた。
職員の声
利用者さんが自分で考え、自分の手で判断して進める姿勢が見えてきたことが、一番の成果だと思います。
現場では、完成品だけでなくプロセスそのものを重視している。職員のサポートは最低限。代わりに、試行錯誤の余白を与える。その中で生まれるアイデアが、次のプロジェクトへとつながっていく。
この“色抜きデニム”のプロジェクトは、就労継続支援A型事業所の新しい可能性を示している。利用者さんが主体的に動き、職員が伴走する——その関係性が、リアルな就労支援のかたちをつくっている。大阪のストリートから生まれる新しい就労支援A型のスタイル。次は、染め直しやペイントのプロジェクトも進行中だ。
見学のご案内
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