人はなぜ「作る」のか──

1. 経済的側面：生計の手段と市場との接続
2. 社会的意義：コミュニティと共鳴する製品
3. 創造的表現：自己を可視化するプロセス
4. 教育的役割：作ることを通じた学びと成長

経済的側面

製品を作って売ることは、いまも経済の心臓部です。企業も個人もそれで生計を立てており、特に現代の資本主義社会では製品開発が競争力を生み、雇用を作り出しています。就労継続支援A型事業所では、障害のある人が労働者として雇用契約を結び、働き、最低賃金以上を稼ぐ。自分の作ったものが商品として評価され、対価を得ることで、自信や達成感が生まれます。

社会的意義

製品は単に経済的利益を生むだけでなく、社会課題を解決する手段としても活用されています。医療機器や補助具は、身体に障害のある人々の生活を支援しています。なかでも福祉サービス事業者の製品開発は、利益追求ではなく公共の利益を優先する点で際立つ。その過程で、利用者さん自身が社会の一員としての実感を持ち、精神的な充足感を得ることができます。

創造的表現

ものづくりには、人間の創造力と芸術性が深く関わっています。デザイナーや職人、アーティストは、製品を通じて自己表現を果たし、それが消費者との感情的なつながりや文化価値を生みます。近年はクラフトやハンドメイドの市場が拡大し、製品に込められた物語性や個性が評価される傾向が強まっています。技術の向上は自己肯定感を育み、一般就労への意欲にもつながります。

教育的役割

製品を作る過程には、学習や訓練の機会が含まれています。特に就労継続支援A型事業所のMirrime（ミライム）においては、ものづくりを通じて利用者さんが実践的なスキルを身につけ、働く意欲や自己肯定感を育てることができます。さらに、協働や工程管理、品質管理といった社会的スキルも身につき、一人ひとりのセンスやこだわりが活かされます。自分にしかできないことが評価される経験が、誇りや喜びにつながります。また、人との関わり方を学び、対人スキルを育む機会となります。

人が製品を作る動機は多様であって、一つの目的に限定されるものではありません。経済的利益の追求はもちろんのこと、社会的課題への対応や創造的な自己表現、さらには教育的な役割も大きく関わっています。現代社会におけるものづくりは、単なる物理的なモノの生産を超えて、人間の価値観や文化、活動を反映する行為として位置づけられています。製品を通じて社会との関係性が築かれ、それが個人や共同体にとって深い意味を持つものとなっています。

利用者さんの声
最初は自分にできるか不安でした。でも、手を動かして形になっていく過程が楽しくて。少しずつ、自分にしかできないことが見えてきた気がします。

今回は、就労継続支援A型事業所のMirrime（ミライム）におけるものづくりの意義を多角的に見てみました。働くことの意味を体験する場として、障害者雇用枠での就職を目指す場として、Mirrime（ミライム）は、「社会とつながる」とはどういうことかを再構築する実験の現場であると思います。リメイクデニム、編み物、デジタルアート、ペインティング──いずれの制作にも共通するのは、手を動かすことで、内面が整理され、社会との接点が生まれるということです。自己肯定感、学び、達成感。それらは製品とともに、利用者さん一人ひとりの表現や感性が、経済活動として流通しうる未来を描いています。



完成ー！